くるりはセンチメンタルを掻き立てる

淡い虹色を帯びた空の裾が私の世界のぐるりをめぐっている。たちならぶ家々の輪郭が西側ばかりサーモンピンクにまぶしく、東の影はみな密やかに青い。関東平野にふきぬける風が家いえの屋根を越えてゆくようだから、それなら風は足立の町をなでているのかしらと私は私の故郷を考えてみる。「故郷は遠くにありて思うもの」とはまさにこのことで、私には私の故郷のどぶくさい川や店の油じみた換気扇や土手やにびいろの町が、静かにかげりゆく空の青さとおなじ美しさで瞼をぬらすように思われるのであった。それはあのオレンジからピンク、そしてむらさきにうつろう空の果ての、さらにその向こうがわに、私の故郷と、そこに私が置いてきた、たくさんのものたちとがあるせいだろう。

赤い電車」が名曲なのにいまさら気付いた