おそらくは秋の午さがり、けだるい二時ごろの、弛緩した空気と静寂があたりをひたしているなかを、ぽつぽつと雨がふるような、そんな日。
 彼の文章をはじめて読んだときに、思い描いた風景。
 ひとりの青年が、年上の女の家にいく話。
 なまぬるい水の透明さよりも、シンクのひんやりとした銀色をおもわせる。彼のなかにながれている時間は、ある瞬間で止まってしまっていて、宙ぶらりんになったまま途方にくれているような、そんな静けさにみちていた。